禁酒・断酒

宮古島の飲酒文化“オトーリ”の恐ろしい害|保健所の調査データが示す現実

左側に宮古島の伊良部大橋、右側にはベージュのTシャツを着た若い男性がグラスを手に静かに飲む姿。中央に「オトーリ文化の裏にあるリスク──宮古島に住んでわかった『飲酒の当たり前』が抱える問題」の文字。
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沖縄・宮古島では「オトーリ」という独自の飲酒文化があります。島の人々の結びつきを象徴するこの風習ですが、その裏には健康被害や社会問題も潜んでいます。

今回は保健所の調査報告書と、地元出身の僕の体験から「飲酒が当たり前」の文化を見つめ直します。

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オトーリ文化に抱いていた違和感

オトーリとは?
宮古島特有の酒の回し飲み文化で、席上の主催者が口上を述べて杯を飲み干し、その杯を次々に回していくスタイルです。一巡ごとに「御拝(うがみ)」「ご苦労さん」といった言葉を交え、参加者全員が繰り返し酒を飲むため、強制的な飲酒につながりやすい風習でもあります。

この風習は一体感を高めるとされる一方で、急性アルコール中毒や依存症の温床になるリスクも指摘されています。

僕は宮古島出身です。物心ついたころから、宴の場では必ずオトーリが回っていました。「飲むのが当然」という空気の中で育ち、体質的にも酒に強かった僕には、「断る」という選択肢はありませんでした。

今思えば、それ自体が“空気を読む訓練”のようなもので、知らず知らずに酒文化に巻き込まれていたんだと思います。

飲酒の実態調査報告書から見える、宮古の“飲酒の現実”

全国平均よりはるかに高い飲酒量・頻度

宮古地域の男性のうち、6ドリンク(泡盛3合程度)以上の多量飲酒をする人の割合は71.0%(全国平均の約5倍)。女性でも26.7%と4倍以上の開きがあります。

また、AUDITスコアで見ると、男性の67%が「問題飲酒者」(8点以上)であり、依存症が疑われる人(15点以上)は23.1%。地域全体では10,700人が問題飲酒者、3,700人が依存症の疑いと推定されています。

AUDITスコアとは?
AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)は、WHO(世界保健機関)が開発した「飲酒による問題リスク」を測るためのスクリーニングテストです。
10項目の質問に答えることで、飲酒量・頻度・依存傾向などを数値化し、次のように分類されます:

  • 0~7点:問題飲酒ではない(啓発・予防)
  • 8~14点:問題飲酒の可能性あり(減酒支援)
  • 15点以上:アルコール依存症が疑われる(専門相談へ)

※ 宮古地域では独自の基準(宮古適用版)も導入されており、10点以上が問題飲酒、20点以上が依存症疑いとして扱われています。

未成年の飲酒、若年女性の高リスク

報告書によると、未成年飲酒者の平均初飲年齢は男性で17.1歳、女性で17.4歳。全体の未成年飲酒率は、実に21.9%にものぼります。

僕自身も、その中のひとりでした。
当時の僕にとって、それが違法であるという感覚よりも、「断れない空気」のほうがはるかに強かったのです。

「味わう」なんてことは考えたこともなく、ただただ酒を流し込むことが“正しい飲み方”だと信じていました。
それが、僕にとっての当たり前でした。

「飲まない」という選択が難しい理由

文化・習慣・同調圧力がつくる壁

断酒してから、僕は「オトーリの場」には近づかないようにしています。行けば流れで飲んでしまう自信があるからです。

「飲まない」と決めることで、人間関係が変わった部分もありますが、それ以上に、自分を大切にできるようになった気がします。

飲酒が引き起こす具体的なトラブル

宮古地域の「路上寝」通報件数は全国の倍以上

宮古地域では人口比で年間13.8件/千人(沖縄県全体の2倍以上)もの路上寝通報があります。

僕も飲んでいた頃、4〜5回は路上で寝た覚えがあります。畑の脇で蚊に刺されて起きた朝は、何とも言えない気持ちでした。

飲酒運転・家庭内暴力との関連も

飲酒運転の検挙率は2.0件/千人(県平均の2倍)、配偶者暴力の相談では37%が飲酒関連。高齢者虐待でも半数以上が飲酒に関連とされています。

地域のために、できること

飲まない選択を許容する雰囲気づくり

「今日は飲まない」──それを言える雰囲気があるだけで、救われる人はたくさんいると思います。

「オトーリを断る練習」も大事

宮古福祉保健所では、「オトーリカード」という飲酒を断るための意思表示ツールも配布しています。こうした選択肢が、文化との折り合いをつけるヒントになるかもしれません。

僕は“断酒キャラ”として生きていきます。周囲から「飲まない人」と認識されるだけで、変に誘われなくなりますし、自分の意志を守るための一つの手段になっています。

まとめ|断酒は個人の選択、だけど社会全体の問題でもある

オトーリという文化を否定するつもりはありません。でも、「飲まない」という選択肢があってもいい。

飲酒を取り巻く環境が、誰かの健康や命を削っているとしたら──。小さな違和感からでも、立ち止まって考えてみてほしいと思います。

あなたの町にも「飲んで当然」の空気はありませんか?

🧭 参考リンクまとめ

内容リンク
沖縄県|美ぎ酒飲みカード(旧名称:オトーリカードhttps://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/chiikihoken/miyako/documents/otoricard.pdf
宮古地域における飲酒の実態調査報告https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/021/567/inshujittai.pdf
宮古地域における飲酒の実態調査
中間報告
https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/chiikihoken/documents/chuukannhoukokushiryou_1.pdf

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50代、再起動中。

この記事の執筆者|炊き技カレー

人生折り返し地点からのチャレンジ。

沖縄の宮古島で働く50代が、本気で断酒・ダイエット・資産づくりに取り組みながら、毎日を更新中。

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