なぜ「ほろ酔い」で止められないのか?その3つの理由と「あと一杯」を断ち切るための具体的な方法
飲み会や食事の席で、ふとこんなセリフを耳にすることがあります。
「あ、もう、ほろよいだからこのへんで」 「ちょっと酔い覚ましついでに、一駅分歩いて帰るよ」
笑顔でグラスを置き、涼しい顔で席を立つ。 そんなふうに、お酒とスマートに付き合える人に、私は強烈に憧れてきました。
「ほろよい」という、一番心地よい状態をキープしたまま、自分の意志でピタッと止める。
それに比べて、自分はどうでしょう。
「あと一杯だけ」 「もう少しだけ」
そう思っているうちに、気づけば深酒。翌朝待っているのは、ズキズキする頭痛と、「また飲んでしまった…」という自己嫌悪。
「ほろよいで止める」。 それができたら、どんなにいいだろう。
この記事は、「わかっているけど止められない」というジレンマを抱えるあなたのために書いています。
なぜ私たちは「ほろよい」で止められないのか、その明確な「3つの理由」と、「あと一杯」を断ち切るための具体的な方法をご紹介します。
なぜ「ほろ酔い」で止められないのか?【3つの理由】
まず知っておいてほしいのは、「ほろよいで止められない」のは、あなたの意志が特別弱いからではない、ということです。そこには明確な理由があります。
理由1:【脳】アルコールによる「理性のブレーキ」の麻痺
最大の理由はこれです。アルコールには、脳の「理性」や「抑制」を司る部分(前頭葉)を麻痺させる作用があります。
飲む前は「今日は2杯まで」と固く誓っていても、お酒が体内に入ると、その「誓い(=理性)」よりも「快感(=本能)」が優位に立ってしまいます。
「止める」という判断力そのものが、お酒によって鈍らされてしまうのです。つまり、お酒を飲むほどに「止めるためのブレーキ」が効かなくなっていくのです。
理由2:【習慣】「ストレス=飲む」という心のクセ
仕事で疲れた時、嫌なことがあった時、「とりあえず飲んで忘れよう」と考えることはありませんか? これを繰り返していると、「ストレスを感じたら、お酒を飲む」という思考回路が脳に強くインプットされてしまいます。
これが「習慣化」です。 ほろ酔いになってストレスが少し和らいだ時、脳は「もっと飲めば、もっと楽になる」と勘違いし、「あと一杯」を強く要求してくるのです。
理由3:【環境】「まだ大丈夫」と思わせる周囲の雰囲気
- 「まだみんな飲んでるし…」
- 「ここで一人だけやめるのは、場をしらけさせるかも…」
- 「もう一杯どう?」と勧められたら、断りにくい…
こうした「環境要因」も、私たちのブレーキを外す大きな原因です。特に日本のお酒の席では、「みんなと合わせる」ことが美徳とされる風潮も残っています。
その場の空気が、「まだ大丈夫」という免罪符を与えてしまい、結果として自分の決めたラインを超えてしまうのです。
「あと一杯」を断ち切るための
具体的な5つの方法
では、これらの理由を踏まえた上で、どうすれば「あと一杯」を断ち切れるのでしょうか。意志の力だけに頼らない、具体的な「技術」をご紹介します。
1. 「飲む前」に宣言する
脳が麻痺する前に、手を打ちます。「今日は〇杯で帰る」「21時にはお店を出る」と、一緒に飲む人に「宣言」してしまいましょう。「酔ったら忘れちゃうかもしれないから、その時は止めてね」とお願いしておくのも手です。
2. チェイサー(水)を「主役」にする
これは鉄則です。お酒を一口飲んだら、水を二口飲む。必ずお酒のグラスと水のグラスを両方手元に置き、「水を飲むためにお酒を飲む」くらいの意識を持ちます。血中アルコール濃度の上昇を緩やかにし、理性を保つ時間を作ります。
3. 「酔い覚まし」を先取りする
「酔い覚ましに歩いて帰る」が理想なら、飲み会の「途中」で一度、外の空気を吸いに出てみましょう。
「ちょっと電話してくる」「少し酔い覚まししてくる」と席を立ち、数分間クールダウンするだけで、脳の麻痺が少しリセットされ、「あ、結構飲んだな」と我に返ることができます。
4. あえて「ノンアルコール」を挟む
「切り替える」意識が重要です。「ビール2杯の後は、ノンアルコールビールにする」「この料理を食べたら、次はウーロン茶」など、あらかじめ「切り替えのタイミング」を決めておきます。
見た目や飲む動作は変わらないため、場の雰囲気を壊さずにペースダウンできます。
5. 「飲み放題」を選ばない
お店選びも重要です。「元を取らなきゃ」という心理(理由3の環境要因)は、確実にあなたを飲み過ぎへと誘導します。アラカルトで注文し、一杯ごとにお金を払うシステムを選ぶことで、「今、自分はいくら飲んでいるか」を意識しやすくなります。
それでも難しいと感じたら?
一番「楽」な選択肢
ここまで5つの方法をご紹介しましたが、 正直に言って、これらを「毎回」「完璧に」実行するのは、本当に大変です。
なぜなら、先ほども触れたように、アルコールは私たちの脳に「もっと飲みたい」と思わせるようにできているからです。
お酒を飲むたびに、 「今日は何杯まで」 「水を飲まなきゃ」 「ここで止められるか…?」 と、自分自身と戦い続けるのは、本当に疲れます。
もし、あなたが「お酒をコントロールする」こと自体に、大きなストレスや疲れを感じているとしたら…。
いっそのこと、「お酒と戦うのを、やめる」という選択肢があります。
そう、「断酒」です。
「断酒」と聞くと、「我慢」「つらい」「人生の楽しみが奪われる」といった、ネガティブなイメージが浮かぶかもしれません。
でも、少しだけ視点を変えてみてほしいのです。
「お酒を我慢する」のではありません。 「お酒に振り回される人生から、降りる」と決めることです。
そう決めた瞬間から、 「ほろよいで止める」という難しいコントロール術を身につける必要もなくなります。 「あと一杯」の誘惑と戦う必要もありません。
「酔い覚まし」なんてセリフを吐かなくても、最初からシラフで、自分の足で、どれだけでも好きなだけ歩いて帰ることができるのです。
翌朝の後悔も、二日酔いの頭痛も、自己嫌悪も、もうありません。
「ほろよいでスマートに止める」というテクニックを磨き続ける道もあれば、 その「戦いの舞台」そのものから降りて、穏やかな日常を手に入れる道もある。
お酒をコントロールしようとする努力に本当に疲れてしまったなら、 「飲まない」という選択が、実は一番「スマート」で、一番「楽」な解決策になることも、心の片隅に置いておいてほしいのです。
まとめ
「ほろよいで止められたらいいな」 その憧れは、あなたが「今のお酒との付き合い方を変えたい」と思っている、大切なサインです。
まずは、ご紹介した節酒のテクニックを試してみてください。 でも、もしそれが苦しい戦いになるようなら、 「戦わない」という、最強で、最も穏やかな選択肢があることも、どうか忘れないでください。
どちらを選んでも、あなたが「お酒で後悔しない」明日を手に入れるための、大切な第一歩になるはずです。
