断酒

断酒したい。でも常連の飲み屋と別れるのツライ|51歳が12年通った店をスパッとやめた理由と続けるコツ

`断酒を決意した中年男性が静かに目を閉じている様子。左には「10年通ったあの店に、さよならを告げた日。」というキャッチコピー。
takizawa

断酒を始めようと決意したとき、僕の中で大きな壁になったのは、「常連として通っている飲み屋との関係を断ち切ること」だった。

もう12年も通っている店だ。あの飲み屋に初めて足を踏み入れたのは、まだ今とは違う家に住んでいた頃。家から歩いて3分ほどの距離にあったその店は、仕事帰りにふらっと立ち寄るのにちょうどよかった。

なぜその店を選んだのかといえば、たまたま灯りが温かそうだったからだ。小さな引き戸を開けると、カウンター越しにマスターが笑顔で迎えてくれた。その夜、たまたま隣に座った常連さんと話がはずみ、「ここ、居心地いいな」と思ったのが始まりだった。

それから僕はその店の常連になり、ひとりで行っても会話が絶えない、笑いが絶えない、そんな場所になった。誕生日にはマスターがサプライズでケーキを用意してくれて、店のおごりで乾杯したこともある。転職の話を報告したときも、「よくやったな」「次はもっといいことあるぞ」と励ましてくれた。

そんな“人生の伴走者”のような存在だった場所を手放すことが、どれだけつらいことか…。ただの酒場ではなかったのだ。

それでも断酒する理由

でも、やっぱり、どう考えてもこのままではまずい。

健康診断ではここ数年、肝機能異常、糖尿病予備軍、高血圧の項目に赤いマークが付き始め、医者から「節酒どころじゃなく断酒レベルですね」と言われた。日常でも、身体が重い。朝起きるのがつらい。疲れが抜けない。

そしてお金の問題。収入が右肩下がりの中、飲み代は変わらず月2~3万円。下手をすると財布が空になるほど飲み歩いてしまった月もある。気づけば貯金が減っていて焦る。51歳、もう折り返し地点を過ぎている。老後資金を食いつぶしているような飲み方じゃ、本当に人生が詰んでしまう。

極めつけは、ある日のこと。健康診断の封筒を開けた瞬間、背筋が凍った。「肝機能数値が著しく高いので、早急な再検査を」と太字で書かれていた。これはもう、ただの習慣じゃない。命に関わる問題だと悟った。

お酒で失敗した体験と自己嫌悪

思い返せば、重要な会議がある朝に寝坊してしまったことがあった。頭が痛くて体が動かない。あの時の自己嫌悪は今でも忘れられない。なぜ昨日あんなに飲んだ? どうして断れなかった?

実は、こうした自己嫌悪は、飲むたびに繰り返していた。楽しい夜が終わって、財布を見て絶句する。残高不足。何度同じ失敗をすれば気が済むのかと、自分で自分が情けなかった。

常連の飲み屋とどう向き合うか

それでも、その店が嫌いなわけではない。マスターや仲間に嫌気がさしたわけでもない。むしろ、今でも名残惜しい気持ちは確かにある。

けれど僕の性格からして、「少しずつ距離を取る」という方法は正直難しい。最初は「週に1回だけ顔を出す」「ノンアルで過ごす」なども考えたが、自分の性格をよくわかっている。飲みの場に行って飲まないなんて無理だし、周りの楽しそうな様子を見て我慢できるほど強くもない。

やめるならスパッとやめるしかない。中途半端が一番良くない。

では、どうやってその「スパッと」を自分に納得させるか? ネットや書籍を漁って見つけたのが、「行かないことに合理的な理由を持つ」という考え方だった。ただの感情ではなく、現実のデータに基づく理由を持てば、自分自身も納得しやすくなる。

以下に紹介する3つのデータは、僕の断酒に大きな後押しをしてくれた。

1. 飲酒はがんの原因になる(国立がん研究センター)

国立がん研究センターによると、アルコール摂取は食道がん・大腸がん・肝臓がんなど6種以上のがんと明確な関連があるとされています。特に日本人はアセトアルデヒドの分解酵素が弱い人が多く、少量でもリスクが高いとのこと。「1杯くらいなら大丈夫」が命取りになりかねない。

2. 飲酒による年間経済的損失は約4.2兆円(厚労省)

個人の視点だけでなく、国全体で見ても飲酒が社会に与える損失は膨大です。病気や事故、生産性の低下、犯罪、失業などを含めて、年間で約4.2兆円もの経済損失が発生しているとの報告があります。つまり飲酒を続けることは、自分の生活だけでなく社会的にも“損”を積み上げている行為とも言えます。

3. 飲酒は「うつ病リスク」を2倍にする(厚労省・疫学研究)

「酒は気晴らしになる」と思いがちですが、現実は逆です。長期にわたる飲酒習慣を持つ人は、飲まない人に比べてうつ病を発症するリスクが約2倍に高まるというデータがあります。一時のストレス解消どころか、心の病を深めてしまう可能性があるのです。

こうした事実を知ることで、「もう行かない」と決めた自分に対して納得できるようになりました。理屈で自分を説得できたことで、後ろ髪を引かれるような感情が徐々に薄れてきたのも実感しています。

断酒の先にある人生

断酒を始めてから、朝の時間が変わった。すっきり起きて、朝日を浴びながらストレッチをする。小さなことだけど、心が晴れる。最近は健康のためにウォーキングも始めた。

目指したい未来がある。健康を取り戻して、気ままに旅をしたい。老後に笑顔で暮らせる自分でありたい。働き続けるのではなく、選んで働ける余裕を持ちたい。

あの飲み屋の記憶は、僕の人生にとって大切な一部。だけど、次のステージに進むためには、変わることも必要だ。

この文章を読んでくれた誰かが、同じような悩みを抱えているなら――少しでも参考になれば嬉しいです。

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炊き沢カレー
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50代、再起動中。

この記事の執筆者|炊き沢カレー

人生折り返し地点からのチャレンジ。

沖縄の宮古島で働く50代が、本気で断酒・ダイエット・資産づくりに取り組みながら、毎日を更新中。

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