ただの出張が、ちょっと特別な日になった話 〜多良間島編〜

今日は、いつもの業務とは少し違う1日だった。
目的地は、多良間島。宮古島から小型飛行機で約25分。
飛行機に乗るのは久しぶりだったけど、やっぱり体にフィットする座席とは言いがたい。
案の定、シートベルトを締めるのに一苦労。ベルトと格闘する自分にちょっと苦笑いしながら、ふと窓の外に目をやると、美しい海と島のコントラストが広がっていた。
「あぁ、これは……来てよかったかもしれない」
そんな気持ちにさせてくれる景色だった。
多良間島に着くと、空港はこぢんまりとしていて、なんとも穏やかな空気が流れていた。
宮古島とはまた違った時間の流れ方をしている。忙しない日常のなかで、ちょっと忘れていた感覚を思い出させてくれる場所だった。
出張の目的は業務の打ち合わせと調査対応。

仕事の話が終わったあとは、しばしの自由時間。
白砂のビーチと、透明度の高い海が目の前に広がっていた。
集落は素朴で、昔ながらの沖縄の風景がそのまま残っている。
そして、あちこちで「スツウプナカ」の準備が進んでいた。これは多良間島の豊年祈願祭。8月踊とは違い、“感謝”ではなく“祈願”のための祭り。
実は僕は多良間の出身で、こうして仕事で島に戻ってくるのは不思議な感覚だ。
今日は偶然にも、道端で同級生3人にバッタリ出会った。みんな驚くほど変わっていなくて、少し照れくさいような、うれしいような。
そして実家に寄ると、母親からは開口一番、「太ったね」と手厳しい一言。はい、知ってますとも……。でもそれも含めて、帰ってきた感じがした。
そんなこんなであっという間に帰りの時間。
帰りの飛行機も、もちろんベルトと戦った。だけど、機体が浮き上がり、眼下に広がる多良間の全景とリーフの連なりを見た瞬間、そんなことは全部どうでもよくなった。
「来てよかったな」
そんな一言が胸に浮かんだ。
たまには、日常から少し離れて、別の土地の空気を吸ってみるのも悪くない。
仕事であっても、こうして心がふっとほどける瞬間があるなら、それはもう立派な「旅」だと思う。
いろんな出会いと気づきがあって、空の上でしみじみとそのことを思い出していたら、自然と笑顔になっていた。
うん、これでいいのだ。
