酒で体を温めるって本当?──冷えと血管拡張の“気持ちいい誤解”を正す

はじめに
「風邪には卵酒」「寒い夜は熱燗で温まる」──そんな言葉、聞いたことありませんか? 僕もかつては信じていました。実際、飲んだ直後は体がポカポカして、「お、効いてるかも」と思ったものです。
でも断酒を経験した今、冷静に考えてみると「それって本当に温まってたのか?」と疑問に思うようになりました。
この記事では、厚生労働省の情報などを元に、酒と“体の冷え”の関係を科学的に掘り下げつつ、僕自身の実感も交えてお届けします。
「酒は体を温める」は本当か?
まず結論から言うと、酒を飲むと“温まったように感じる”のは事実です。
これはアルコールによって血管が一時的に拡張し、皮膚の表面に血流が増えるため。手足が温かくなり、顔が赤らむのもその作用です。
つまり、“体感”としては温まるけれど、体の深部(核心体温)は逆に下がっているというのが実態なのです。
「飲酒で体が温まる」は誤解?
飲酒によって体が温まると感じるのは、アルコールの作用で末梢血管が拡張し、皮膚表面の血流が増えるためです。
しかし、これは一時的なものであり、実際には体の深部体温は低下します。東邦大学のレポートでも、飲酒による体温低下と感覚の鈍化が指摘されています。
「お酒を飲むとなんとなくポカポカと体の表面は温かく感じますが、血管が拡張するため体温は低下します。」
― 東邦大学医療センター大森病院 総合診療科「メディカルレポート」(2015年)https://www.toho-u.ac.jp/press/2015_index/035375.html
「僕も以前は、寒い夜に熱燗を飲んで体を温めていました。確かにその瞬間はポカポカと感じましたが、しばらくすると逆に寒気を感じることがありました。今思えば、あれはアルコールの影響で体温が下がっていたのかもしれません。」
「飲んだ直後はあったかい」でも……
僕もよくやっていました。 寒い帰り道にコンビニで缶チューハイを買って、家で飲みながら「ふぅ〜温まる〜」と満足していたものです。
でも、飲んでしばらくすると逆に寒く感じて、毛布をかぶってガタガタ震えていた経験も……。
この“ポカポカした感じ”はあくまで一時的なもの。体の表面に熱が集まり、核心部の熱がどんどん外に逃げているのです。
要は「勘違い」。
アルコールと風邪・冷えへの逆効果
体温が下がることで、免疫力にも影響が出ます。
「お酒を飲むと抵抗力、免疫力が落ちるということは、これまでにも言われています。…だいたいお酒で言うところの2単位。アルコール分で言うと40グラムです。具体例としては、ビールの缶2本くらい。…それより上になると、免疫力が落ちて行きます。」
― 東京都医師会理事・黒瀬巌医師、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」
出典:ニッポン放送 NEWS ONLINE
飲酒による眠気は“リラックス”ではなく、単なる中枢神経の麻痺です。 本当の意味での回復や体力維持のためには、断酒や節酒のほうがはるかに有効なのです。
卵酒は“気休め”?
昔ながらの風邪対策として「卵酒」を飲んでいた方も多いかもしれません。
でも実際に体に効いていたのは、アルコールではなく「温かい液体」や「糖分」。 焼酎や日本酒のアルコール分が少なければまだしも、入れすぎると肝臓への負担が増して、免疫力の低下につながるリスクもあります。
卵酒が効くと感じるのは、「優しさ」「安心感」「習慣による心理的な効果」かもしれません。
断酒してわかった「ほんとうに温まる」もの
断酒して数ヶ月が経った頃、不思議と「寒さに強くなったかも」と思うようになりました。
お風呂にゆっくり浸かる、湯たんぽを使う、スープや味噌汁を飲む。 そういう“温かさ”は、体の内側からじんわり効いてくる。酒のような瞬間的な熱ではなく、持続的な温もりを感じられるようになりました。
✅ 体が冷えていると感じたときにやるべきこと:
- 湯船に浸かる
- 温かい食べ物を摂る
- カフェインを摂りすぎない
- 睡眠をしっかりとる
アルコールは、これらのどれにも貢献しません。
まとめ:「気持ちいい」と「体にいい」は違う
酒で体を温める──それは一種の“気持ちいい誤解”です。
寒い季節に飲む熱燗が心地よいのは事実。でもそれはリラックスの一環であって、健康や体温維持とは別の話。
僕自身、断酒してから「体を温める」方法を見直し、同時に“気持ちだけで選ばない”という意識も芽生えました。
これからの季節、風邪や冷え対策として「酒を飲む」という選択をする前に、ぜひこの事実を思い出してほしいです。